葬儀にまつわる豆知識

はじめに

私、柿本が葬儀に携わる仕事に就いたとき素朴な疑問が湧いてきました。

なぜ線香を立てたり、焼香したりするのだろう?この問いに明解な解答をしてくれる先輩社員は、少なくとも私の身近にはいませんでした。

時が経ち一級葬祭ディレクターとなり、大学で葬儀を教えるまでになりましたが、腑に落ちる答えは見つからないままでした。

そんなある日、五來重先生の「葬と供養」という分厚い本と出会いました。宗教(仏教)民俗学という学問の中で「葬送習俗」という分野で詳しく述べられており、葬法や葬具、供物等にはそれぞれ深い意味があり、そのひとつひとつに願いや祈りが込められていることを識ることになります。さらに研究を進め高野山真言宗の大師教会で研修という名の修行を受け権教師の僧籍を授かります。その際の研修で最初の疑問の答えが見つかったときには目から鱗が落ちる気がいたしたものです。

宗教や宗旨の違いを超えた日本特有の「葬送儀礼」は、まさに今、世界から注目を浴びる「日本人論」の根底にある道徳観の柱とも言える、先祖供養をかたちに表したものです。現在、私の知る限り仏教民俗学としての葬送習俗を解説しているまともなサイトはほとんどありません。

コロナ禍でさらに葬儀式の簡素化が進み、葬儀の意味や儀式に込められた思いの大切さを継承し説明してゆくことができなければ、いずれ忘れ去られていくことでしょう。以前ならば葬儀に詳しい自治会長さんが、どの町内にも必ずと言っていいほどいらっしゃったものです。しかしながら家族葬ではその必要もなくなりました。以前は町内会や同じ寺の檀家同士で助け合い、葬儀における様々な行事の大切さが継承されてきました。最近ではお坊さんとて仏教儀式の作法が中心のため民間の葬送習俗に関しては教えていただくことが少なくなりました。

今、その役割りを少しでも葬儀社として担っていきたいと考えています。

ずいぶん以前から「これからは心の豊かな時代に」と言われ続け、葬儀に関しても「モノ葬儀からコト葬儀に」と言われてきましたが、儀式の簡素化が進む現在では明らかに時代の流れに沿っていないかもしれません。しかし、いまこそ日本人が古来から大事にしてきた道徳観や意味事がギッシリ詰まった「日本人のお葬式」をしっかりと喪家様にご説明すべき時が来たと考えています。その理解と納得が葬儀の満足度となり、プロフェッショナルが揃っている葬儀社としてお伝えすることが使命と感じています。このサイトが少しでも皆様のお役に立てれば幸いに存じます。


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